遺族年金 2026年完全ガイド|遺族基礎年金84万円・遺族厚生年金の計算式と2028年改正(5年有期給付)まで

この記事の要点

  • 遺族年金は「遺族基礎年金(1階)」と「遺族厚生年金(2階)」の2階建て。会社員・公務員だった人が亡くなると両方の対象になりやすい。
  • 2026年度の遺族基礎年金は本体84万7,300円(前年度比+約1万5,600円)。子の加算は第1子・第2子が各24万3,800円。
  • 遺族厚生年金は亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3。40〜64歳の妻には中高齢寡婦加算(2026年度63万5,500円)が上乗せされる。
  • 2028年4月改正で、子のいない配偶者の遺族厚生年金は男女共通で原則「5年の有期給付」に。そのぶん金額は約1.3倍に増え、年収850万円未満という収入要件も撤廃される。

一家の働き手を亡くしたとき、残された家族の生活を支えるのが公的な「遺族年金」です。ただ、遺族基礎年金と遺族厚生年金で受給できる人も金額も違い、さらに2028年4月には大きな制度改正が控えています。この記事では2026年度(令和8年度)の最新金額をベースに、誰がいくらもらえるのか、改正で何が変わるのか、請求手続きまでをわかりやすく整理します。

遺族年金とは?まず2階建ての全体像をつかむ

日本の公的年金は「国民年金(1階)」と「厚生年金(2階)」の2階建てで、遺族年金も同じ構造です。亡くなった人がどの年金に加入していたかで、遺族が受け取れる年金が変わります。

  • 遺族基礎年金…国民年金から支給。「子のある配偶者」または「子」が対象。子のない人は原則もらえない。
  • 遺族厚生年金…厚生年金から支給。会社員・公務員だった人が対象で、子の有無にかかわらず受け取れる可能性がある。

自営業・フリーランス(国民年金のみ)の場合は遺族基礎年金だけ、会社員・公務員(厚生年金)の場合は遺族基礎年金+遺族厚生年金の両方が対象になりやすい、という違いをまず押さえておきましょう。

遺族基礎年金の受給要件と2026年度の金額

遺族基礎年金を受け取れるのは、亡くなった人に生計を維持されていた「18歳到達年度の末日(高校卒業相当)までの子のある配偶者」または「その子」です(障害等級1・2級の子は20歳未満まで)。つまり「子がいること」が大前提で、子のない配偶者は遺族基礎年金の対象外です。

2026年度の本体額は84万7,300円(昭和31年4月1日以前生まれの方は84万4,900円)。改定率の引き上げにより前年度から約1万5,600円増えました。これに子の人数に応じた加算がつきます。

区分2026年度の年額
本体(配偶者)84万7,300円
第1子・第2子(各)+24万3,800円
第3子以降(各)+8万1,300円
配偶者+子2人 合計約133万4,900円

たとえば配偶者と子ども2人の世帯なら、84万7,300円+24万3,800円×2=年間約133万4,900円(月約11万円)が遺族基礎年金として支給されます。末子が18歳到達年度末を迎えると、子の加算も含めて遺族基礎年金は終了します。

遺族厚生年金の受給要件と計算式(報酬比例の4分の3)

遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた(または加入歴のある)人が亡くなったときに支給されます。金額は原則として、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の「4分の3」です。報酬比例部分は現役時代の給与・賞与(標準報酬)と加入月数で決まるため、収入が高く加入期間が長かった人ほど遺族厚生年金も多くなります。

受給要件には「短期要件」と「長期要件」があり、計算の仕方が異なります。

項目短期要件長期要件
主なケース在職中の死亡/初診から5年以内の死亡など老齢厚生年金の受給権者・加入20年以上の人の死亡
給付乗率定率(5.481/1,000 など)生年月日による読み替えあり
加入月数300月未満は300月とみなす実際の加入月数で計算

とくに重要なのが短期要件の「300月みなし」です。若くして亡くなり厚生年金の加入が短くても、最低300月(25年)加入したものとして計算してくれるため、遺族の生活が極端に細らないよう配慮されています。

受給の優先順位:遺族厚生年金は①配偶者・子 → ②父母 → ③孫 → ④祖父母、の順で最優先の遺族に支給されます。配偶者と子がいる場合は配偶者が受け取り、子は支給停止になるのが基本です。なお子のない30歳未満の妻は、現行制度では5年間の有期給付となります。

中高齢寡婦加算とは(2026年度 63万5,500円)

遺族基礎年金は「子のある配偶者」しかもらえないため、子がいない(または子が育って遺族基礎年金が終了した)妻は、そのままでは厚生年金部分しか受け取れません。そこで一定の妻には中高齢寡婦加算が上乗せされます。

2026年度の金額は年63万5,500円。次のいずれかに当てはまる妻が、40歳から65歳になるまで受け取れます。

  • 夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいない妻
  • 遺族基礎年金を受けていた妻が、子が18歳到達年度末を迎えて遺族基礎年金を受け取れなくなったとき、40歳以上65歳未満である場合

ただし加算の対象となるのは、厚生年金加入中の夫が亡くなった場合、または加入期間が原則20年以上あった夫が亡くなった場合に限られます。妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が始まるため、中高齢寡婦加算は終了します。

誰がいくらもらえる?世帯モデル別の早見イメージ

遺族厚生年金は故人の報酬で変わるため一概には言えませんが、代表的なモデルでイメージをつかんでおきましょう(金額は概算)。

世帯モデル受け取れる主な年金
会社員の夫+妻+子2人(子が高校生まで)遺族基礎年金(約133万円)+遺族厚生年金(報酬比例×3/4)
会社員の夫+子のない40〜64歳の妻遺族厚生年金+中高齢寡婦加算(63万5,500円)
自営業の夫+妻+子2人遺族基礎年金(約133万円)のみ(厚生年金加入歴がなければ遺族厚生なし)
共働きで妻死亡+夫+子夫も遺族基礎年金・遺族厚生年金の対象(男女問わず受給可能)

遺族基礎年金は子が高校を卒業すると終わるため、子が小さいうちは手厚く、その後は遺族厚生年金(+中高齢寡婦加算)が中心になる、という時間軸での変化も意識しておくと家計設計に役立ちます。

【2028年4月改正】子のない配偶者は原則「5年の有期給付」へ

2025年に成立した年金制度改正法により、2028年4月から遺族厚生年金が大きく見直されます。現行制度には「子のない30歳以上の妻は終身でもらえるのに、夫は55歳未満だと受給権が発生しない」といった男女格差がありました。改正後はこの格差を解消し、男女共通のルールに統一されます。

項目現行制度2028年4月改正後
子のない配偶者(60歳未満で死別)妻は終身/夫は原則対象外男女共通で原則5年間の有期給付
60歳以上で死別男女差あり男女共通で無期給付
給付額従来水準有期化のぶん約1.3倍に増額
収入要件年収850万円未満撤廃

注意:改正は段階的に施行され、対象となる世代が決まっています。すでに受給している人や、施行時点で一定の年齢に達している人には経過措置が設けられ、急に打ち切られるわけではありません。また、子のいる世帯向けには遺族基礎年金の子の加算額を引き上げる方向(1人目・2人目を約28万円へ)の見直しも予定されています。最終的な金額・対象は施行前に日本年金機構や厚生労働省の公式情報で必ず確認してください。

ポイントは「子のない若い世代は終身ではなく原則5年に短くなる代わりに、月々の金額は手厚くなる」という方向性です。生活再建のための集中支援へと性格が変わるため、子のない共働き世帯ほど、民間の保険や貯蓄で長期の備えを検討する余地が大きくなります。

遺族年金がもらえない5つのケース

遺族年金は誰でも自動的に受け取れるわけではありません。次のようなケースでは支給されない、または止まることがあります。

ケース内容
①保険料の納付要件を満たさない死亡日の前々月までの直近1年に未納がある/加入期間の3分の2以上を納めていない(特例あり)
②生計維持関係がない故人に生計を維持されていたと認められない(原則として遺族の前年収入850万円未満などの基準)
③子のない配偶者(遺族基礎年金)子がいないと遺族基礎年金は対象外。遺族厚生年金で対応
④子のない55歳未満の夫(現行)現行制度では受給権が発生しない(2028年改正で見直し)
⑤再婚・養子縁組受給中でも再婚などで受給権を失う

とくに①の保険料納付要件は見落とされがちです。普段から国民年金・厚生年金をきちんと納めておくことが、いざというときの遺族保障につながります。

請求手続きの流れと必要書類(時効は5年)

遺族年金は申請しないと受け取れません。時効は亡くなった日の翌日から5年で、過ぎると原則として受け取れなくなるため、できるだけ早めの手続きが大切です。

請求の主な流れ(5ステップ)

  1. 年金事務所または街角の年金相談センターで「年金請求書」を入手
  2. 死亡を証明する書類(死亡診断書のコピー等)を準備
  3. 戸籍謄本・住民票(世帯全員)など、続柄と生計維持を確認する書類を集める
  4. 請求者の基礎年金番号がわかるもの・受取口座の通帳を用意
  5. 年金事務所へ提出 → 審査後に支給決定通知・受給開始

自営業者など国民年金のみで子のある配偶者・子の場合は、お住まいの市区町村の窓口が請求先になることもあります。書類は故人と遺族の関係によって追加が必要になるため、事前に年金事務所へ電話で確認してから出向くと二度手間を防げます。

受給権が消える「失権」とその届出

遺族年金は受給を始めたあとでも、一定の事情で受給権を失います(失権)。代表例は再婚、直系血族・直系姻族以外との養子縁組、本人の死亡などです。子の場合は18歳到達年度末を迎える、婚姻するなども失権事由になります。

失権したときは届出が必要で、遺族基礎年金は14日以内、遺族厚生年金は10日以内に「遺族年金失権届」を提出します。届出を怠って受給を続けると、後から返還を求められることがあるため注意しましょう。

よくある間違いTOP5

間違い正しい理解
子がいなくても遺族基礎年金がもらえると思っていた遺族基礎年金は「子のある配偶者」か「子」が対象。子がなければ遺族厚生年金で対応
遺族厚生年金は一生満額もらえると思っていた2028年改正で子のない配偶者は原則5年の有期給付に(そのぶん増額)
申請しなくても自動でもらえると思っていた請求手続きが必須。時効5年を過ぎると原則受け取れない
再婚しても黙っていればもらい続けられると思っていた再婚は失権事由。失権届を出さず受給を続けると返還を求められる
中高齢寡婦加算は誰でももらえると思っていた厚生年金加入中(または20年以上加入)の夫の死亡など、要件を満たす40〜64歳の妻に限られる

まとめ

遺族年金は、遺族基礎年金(子のある世帯向け)と遺族厚生年金(報酬比例の4分の3)を軸に、中高齢寡婦加算などで残された家族を支える仕組みです。2026年度は本体・加算ともに増額され、配偶者+子2人なら遺族基礎年金だけで年約133万円が支給されます。一方で2028年4月からは、子のない配偶者の遺族厚生年金が男女共通で原則5年の有期給付へと変わり、給付の性格が「終身の保障」から「生活再建の集中支援」へとシフトします。自分の世帯がどの給付の対象になるのかを早めに把握し、足りない部分は民間保険や貯蓄で補う家計設計を進めておきましょう。具体的な金額や要件は、施行前に日本年金機構の公式情報で必ず確認することをおすすめします。

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