病気やケガで思うように働けなくなったとき、「障害者手帳がないと年金はもらえない」「うつ病では対象外」そんな思い込みで申請をあきらめてしまう人が少なくありません。私の知人も、長く体調を崩して退職したあとに障害年金の存在を知り、「もっと早く動いていれば」と悔しがっていました。
障害年金は、老齢年金・遺族年金の仕組みと並ぶ公的年金の3本柱のひとつで、現役世代でも受け取れる大切な制度です。手帳の有無とは別の基準で判定され、がん・糖尿病・心疾患・精神疾患など、外見ではわかりにくい病気も対象になります。この記事では、2026年度(令和8年度)の最新金額、受給に必要な3つの要件、申請の流れと必要書類までを、はじめての方にもわかるように整理しました。
この記事の要点
- 障害基礎年金は2026年度で1級が年105万9125円、2級が年84万7300円
- 受給のカギは「初診日」「保険料納付」「障害の状態」の3要件
- 2026年4月1日以降に初診日がある人は、納付要件の直近1年特例が使えない
- 請求が遅れても最大5年分はさかのぼって受け取れる
障害年金とは?手帳がなくても受け取れる公的年金
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に支障が出たときに支給される公的年金です。65歳以降に受け取る老齢年金や、亡くなったときに遺族へ支給される遺族年金と同じ年金制度の一部で、若い世代でも条件を満たせば受給できます。
よくある誤解が「障害者手帳が必要」というもの。実際には、障害者手帳と障害年金は別の制度で、手帳の等級と年金の等級は連動しません。手帳を持っていなくても、年金独自の基準(国民年金・厚生年金保険障害認定基準)で障害の状態に該当すれば受給できます。対象となる病気も幅広く、手足の障害や視覚・聴覚の障害だけでなく、がん、糖尿病、心疾患、人工透析、うつ病や統合失調症などの精神疾患、知的障害なども含まれます。
障害基礎年金と障害厚生年金の違い
障害年金には2種類あり、初診日にどの年金制度に加入していたかで決まります。会社員や公務員として厚生年金に入っていれば「障害厚生年金」、自営業・専業主婦(夫)・学生・無職など国民年金のみの人は「障害基礎年金」が対象です。厚生年金の人は障害基礎年金もあわせて受け取れるため、いわゆる「2階建て」になり手厚くなります。
| 項目 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
|---|---|---|
| 対象者 | 国民年金加入者(自営業・主婦・学生など) | 厚生年金加入者(会社員・公務員) |
| 等級 | 1級・2級 | 1級・2級・3級+障害手当金 |
| 3級・一時金 | なし | 3級(最低保障)・障害手当金あり |
| 加算 | 子の加算 | 配偶者加給年金(1・2級)+子の加算 |
| 窓口 | 市区町村役場の国民年金課 | 年金事務所・街角の年金相談センター |
大きな違いは等級の幅です。障害基礎年金は1級と2級までですが、障害厚生年金にはより軽い状態を対象にした3級と、一時金の障害手当金があります。「2級には届かないけれど働き方に制限がある」というケースを、厚生年金ならカバーできるわけです。
受給するための3つの要件
障害年金をもらうには、次の3つをすべて満たす必要があります。順番に確認していきましょう。
(1)初診日要件……その障害の原因となった病気やケガで、初めて医師の診察を受けた日(初診日)に、公的年金に加入していること。この初診日がどの制度かで、障害基礎年金か障害厚生年金かが決まります。初診日は障害年金で最も重要な日付で、これを証明できないと請求そのものが進みません。
(2)保険料納付要件……初診日の前日時点で、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料の納付済期間と免除期間が3分の2以上あること。または、直近1年間に保険料の未納がないこと(特例)。ここで注意したいのが、直近1年の特例は初診日が2026年(令和8年)4月1日より前の場合に限られる点です。2026年4月以降に初診日がある人は原則どおり3分の2要件で判定されるため、未納がある人は早めに納付や国民年金の任意加入・免除申請を検討しておくと安心です。
(3)障害状態要件……障害認定日(原則、初診日から1年6か月を経過した日)に、障害の程度が定められた等級に該当していること。
障害等級と金額【2026年度版・早見表】
2026年度の障害年金は前年度から増額改定されました。障害基礎年金の額は老齢基礎年金の満額が基準で、2級が満額と同じ年84万7300円、1級はその1.25倍です。老齢基礎年金の満額と同じ水準だと考えるとイメージしやすいでしょう。
| 等級 | 障害基礎年金(年額) | 障害厚生年金(目安) |
|---|---|---|
| 1級 | 105万9125円(月8万8260円) | 報酬比例×1.25+配偶者加給23万4800円 |
| 2級 | 84万7300円(月7万0608円) | 報酬比例+配偶者加給23万4800円 |
| 3級 | (なし) | 報酬比例(最低保障63万5500円) |
| 障害手当金 | (なし) | 一時金127万1000円(最低保障) |
障害厚生年金の1級・2級は、上の障害基礎年金に「報酬比例の年金額」を上乗せした形になります。報酬比例部分は現役時代の給与と加入期間で決まるため人それぞれですが、加入期間が短くても最低300月(25年)分は保障されます。3級は障害基礎年金がない分、年63万5500円の最低保障が設けられています。
子の加算・配偶者加給年金
障害年金には家族向けの加算があります。障害基礎年金(1級・2級)を受けている人に生計を維持している18歳到達年度末までの子(障害のある子は20歳未満)がいる場合、子の加算がつきます。2026年度は1人目・2人目が各23万4800円、3人目以降は各7万8300円です。
さらに障害厚生年金の1級・2級では、生計を維持している65歳未満の配偶者がいると配偶者加給年金(年23万4800円)が上乗せされます。加算のしくみは老齢年金の加給年金とはの考え方と共通点が多いので、あわせて読むと理解が深まります。たとえば障害基礎年金2級で子が2人いる家庭なら、84万7300円+23万4800円×2=131万6900円となり、加算の有無で年金額は大きく変わります。
障害認定日と「事後重症請求」
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です(その間に症状が固定した場合はその日)。この時点で等級に該当していれば、認定日の翌月分から年金を受け取れます。これを「認定日請求」といい、過去にさかのぼって(最大5年分)請求することも可能です。
一方、認定日には軽かった症状があとから悪化して等級に該当した場合は、「事後重症請求」という方法があります。こちらは請求した月の翌月分からの支給で、さかのぼりはありません。事後重症請求は65歳の誕生日の前々日までに行う必要があるため、悪化に気づいたら早めの行動が肝心です。「もう何年も前のことだから」とあきらめず、まずは年金事務所に相談してみましょう。
申請の流れと必要書類
申請は次の流れで進みます。最大の山場は初診日の証明と診断書の準備です。
- 初診日を特定し、年金事務所や市区町村窓口で保険料納付要件を確認する
- 初診の医療機関で「受診状況等証明書」を取得する(初診と現在の病院が同じなら省略可)
- 現在の主治医に障害認定日や請求日時点の「診断書」を書いてもらう
- これまでの経過を自分でまとめる「病歴・就労状況等申立書」を作成する
- 年金請求書・添付書類をそろえて窓口へ提出する
| 主な書類 | 入手先 | ポイント |
|---|---|---|
| 年金請求書 | 年金事務所・市区町村 | 基礎年金番号・口座情報が必要 |
| 診断書 | 主治医 | 障害の種類で8様式に分かれる |
| 受診状況等証明書 | 初診の医療機関 | 初診日の証明。最重要書類 |
| 病歴・就労状況等申立書 | 本人が作成 | 発症から現在までを時系列で |
提出先は、障害基礎年金なら市区町村の国民年金課、障害厚生年金なら年金事務所です。審査には通常3か月程度かかります。書類が複雑で不安な場合は、社会保険労務士に依頼する方法もあります。
つまずきやすいのが診断書です。障害の種類によって8つの様式に分かれており、たとえば認定日請求とさかのぼり請求を同時に行う場合は「認定日から3か月以内の診断書」と「現在の診断書」の2枚が必要になります。診断書には有効期限(現症日から原則3か月以内)があるため、取得のタイミングを誤ると書き直しになることも。主治医に依頼する前に、どの時点の診断書が必要かを年金事務所で確認しておくと、二度手間を防げます。また、初診の病院がすでに廃院している場合は、受診状況等証明書の代わりに当時の診察券やお薬手帳、第三者証明などで初診日を立証する方法もあるので、書類がそろわなくても自己判断であきらめないことが大切です。
20歳前の傷病による障害基礎年金
生まれつきの障害や、20歳になる前の病気・ケガが原因の場合は、保険料を納めていなくても「20歳前傷病による障害基礎年金」が受けられます。年金に加入する前の障害を救済するための特例で、保険料納付要件は問われません。
ただし、本人が保険料を負担していない制度のため、所得制限があります。前年の所得が一定額(扶養親族がいない場合でおおむね370万円台)を超えると年金額が半分に、さらに高い基準(同472万円台)を超えると全額が支給停止になります。働いて収入が増えた年は支給が止まることもあるので、収入の見込みとあわせて把握しておきましょう。
働きながら・他の年金とあわせて受給できる?
障害年金は、働きながらでも受け取れます。とくに障害厚生年金3級は、ある程度働ける状態を想定した等級なので、就労と両立しやすい制度です。ただし精神障害などでは就労状況が審査に影響することもあるため、申立書に実際の働き方(勤務時間・配慮の有無など)を具体的に書くことが大切です。
他の年金との関係では、65歳以降は「障害基礎年金+老齢厚生年金」のような有利な組み合わせを選べる場合があります。また、在職老齢年金のような支給停止の仕組みは障害年金にはなく、給与によって年金が減らされることは原則ありません。受給開始後も、障害の程度が変われば等級が見直される(額改定請求)点は覚えておきましょう。
まとめ:まずは初診日の確認から
障害年金は、手帳がなくても、働いていても受け取れる可能性がある制度です。判定のカギはあくまで「初診日」「保険料納付」「障害の状態」の3要件。とくに2026年4月以降に初診日がある人は納付要件の特例が使えなくなったため、日ごろの保険料管理がこれまで以上に重要になっています。「自分は対象かもしれない」と思ったら、まずはお薬手帳やカルテで初診日を確認し、年金事務所に相談することから始めてみてください。請求が遅れても最大5年分はさかのぼれます。動き出すのに遅すぎるということはありません。