「親から住宅の頭金を出してもらった」「孫の教育費を祖父母が援助してくれた」うれしい話のはずなのに、ふと「これって贈与税がかかるの?」と不安になったことはありませんか。私自身、結婚のときに両親から少しまとまったお金を受け取り、あとから「申告が要るのでは」と慌てて調べた経験があります。
贈与税は「知らないと損をする」ことも「知っていれば非課税にできる」こともある税金です。とくに2024年以降は生前贈与加算の7年延長や相続時精算課税の110万円基礎控除の新設など、相続対策に直結する大きな改正が続いています。この記事では、贈与税の基本のしくみから2026年の最新ポイント、計算のしかた、申告の手順までを、はじめての方にもわかるように整理しました。
この記事の要点
- 贈与税は「1年間にもらった財産の合計」から基礎控除110万円を引いた額に課税される
- 税率は特例税率(親・祖父母→18歳以上の子・孫)と一般税率の2種類
- 2024年改正で生前贈与加算が3年→7年に延長、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設
- 教育資金の一括贈与の非課税は2026年3月31日で終了(廃止)
- 住宅取得等資金・配偶者控除(おしどり贈与)など、使える非課税の特例がある
贈与税とは?かかる人・かからない人
贈与税は、個人から財産を「タダで(または著しく安く)」もらったときに、もらった側(受贈者)にかかる税金です。現金だけでなく、不動産・株式・自動車・貴金属、さらに「親名義のローンを肩代わりしてもらった」「時価より大幅に安く売ってもらった」といったケースも対象になり得ます。
ポイントは「もらった人」が申告・納税すること、そして1月1日から12月31日までの1年間(暦年)でもらった合計額で判定することです。1年間の合計が110万円以下なら、原則として贈与税はかからず申告も不要です。
一方で、夫婦や親子の生活費・教育費のうち「通常必要と認められるもの」を、必要なつど渡す分には贈与税はかかりません。仕送りや学費をその都度負担するのは非課税です。ただし、生活費の名目でもらって貯金や投資に回した分は課税対象になり得るので注意しましょう。
暦年課税の110万円基礎控除のしくみ
もっとも一般的な課税方法が「暦年課税」です。1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を差し引き、残った金額に税率をかけて計算します。
気をつけたいのは、110万円は「あげる人ごと」ではなく「もらう人ごと」の枠だという点です。父から100万円、母から100万円をもらったら合計200万円となり、110万円を超えた90万円が課税対象になります。「2人からもらったからそれぞれ110万円ずつ非課税」ではありません。
毎年110万円ずつ贈与する「暦年贈与」は有効な節税ですが、「毎年100万円を10年間贈与する」と最初に約束していたとみなされると、合計1,000万円の贈与(定期贈与)と判断され課税されるおそれがあります。贈与のたびに契約書を作り、金額や時期を少しずつ変えるなどの工夫が安全です。
贈与税の税率と速算表(特例税率・一般税率)
贈与税には2つの税率表があります。特例税率は、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の人が、直系尊属(父母・祖父母)からもらった場合に使う、やや軽めの税率です。それ以外(兄弟姉妹・夫婦・他人からの贈与、または受贈者が18歳未満)は一般税率になります。いずれも110万円を引いたあとの「基礎控除後の課税価格」に当てはめます。
| 基礎控除後の課税価格 | 特例税率/控除額 | 一般税率/控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10%/0円 | 10%/0円 |
| 300万円以下 | 15%/10万円 | 15%/10万円 |
| 400万円以下 | 15%/10万円 | 20%/25万円 |
| 600万円以下 | 20%/30万円 | 30%/65万円 |
| 1,000万円以下 | 30%/90万円 | 40%/125万円 |
| 1,500万円以下 | 40%/190万円 | 45%/175万円 |
| 3,000万円以下 | 45%/265万円 | 50%/250万円 |
| 4,500万円以下 | 50%/415万円 | 55%/400万円 |
| 4,500万円超 | 55%/640万円 | 55%/400万円 |
最高税率55%が適用されるのは、特例税率では4,500万円超、一般税率では3,000万円超からです。同じ金額でも、親子間(特例税率)のほうが税負担は軽くなります。
計算例でわかる贈与税
言葉だけだとイメージしづらいので、具体的に計算してみましょう。計算式は「(もらった額-110万円)×税率-控除額」です。
例1:親(直系尊属)から18歳以上の子へ500万円
500万円-110万円=390万円 → 特例税率15%・控除10万円
390万円×15%-10万円=48万5,000円
例2:おじから甥へ500万円(一般税率)
500万円-110万円=390万円 → 一般税率20%・控除25万円
390万円×20%-25万円=53万円
例3:親から子へ1,000万円
1,000万円-110万円=890万円 → 特例税率30%・控除90万円
890万円×30%-90万円=177万円
同じ500万円でも、続柄によって税額が4万5,000円ほど変わります。誰からもらうかで税率表が変わる点を押さえておきましょう。
2024年改正と2026年の最新ポイント
相続対策に直結する大きな改正が2024年から動いています。2026年時点で必ず押さえておきたいのが次の3点です。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2024年〜) |
|---|---|---|
| 生前贈与加算の期間 | 相続開始前3年 | 相続開始前7年に延長(延長4年分は合計100万円控除) |
| 相続時精算課税の基礎控除 | なし(毎回申告) | 年110万円を新設(暦年とは別枠) |
| 教育資金の一括贈与(最大1,500万円) | 適用期限あり | 2026年3月31日で終了(廃止) |
生前贈与加算とは、亡くなった人から相続人などが生前にもらった財産を、相続税の計算に持ち戻すしくみです。これが3年から7年に延びたため、暦年贈与による「早めの相続対策」の重要性がいっそう高まりました。延長された4年分(死亡前4〜7年)については、合計100万円まで持ち戻し額から控除できます。
2024年1月1日以降の贈与から段階的に適用されるため、実際に「7年分まるごと加算」となるのは数年先からです。とはいえ「贈与は早く始めるほど有利」という方向性は変わりません。教育資金の一括贈与を検討していた方は、2026年3月末の終了に注意してください。
暦年課税と相続時精算課税、どちらを選ぶ?
贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらかを選べます。相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選択でき、累計2,500万円までの特別控除と、2024年新設の年110万円の基礎控除が使えます。
| 比較項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年110万円 | 年110万円+累計2,500万円の特別控除 |
| 対象者 | 制限なし | 60歳以上→18歳以上の子・孫 |
| 相続時の扱い | 原則7年分を持ち戻し | 贈与額を相続財産に加算(年110万円分は加算不要) |
| 注意点 | 毎年コツコツ向き | 一度選ぶと暦年に戻れない |
2024年の改正で相続時精算課税にも年110万円の基礎控除ができ、しかもその110万円分は相続財産に持ち戻さなくてよいため、使い勝手が大きく向上しました。まとまった額を早めに渡したいなら相続時精算課税、少額をコツコツ続けたいなら暦年課税が向きます。ただし相続時精算課税は一度選ぶと暦年課税に戻れないので、事前のシミュレーションが欠かせません。
知っておきたい非課税の特例
基礎控除とは別に、目的を限定した非課税の特例があります。条件に合えば大きな額を非課税で渡せます。
| 特例 | 非課税枠の目安 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 住宅取得等資金の贈与 | 省エネ等住宅1,000万円/その他500万円 | 直系尊属→18歳以上、合計所得2,000万円以下など(2026年末まで) |
| 配偶者控除(おしどり贈与) | 最高2,000万円(+基礎控除110万円) | 婚姻20年以上、居住用不動産またはその取得資金 |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 1,000万円(結婚関係は300万円) | 18歳以上50歳未満、適用期限は要確認 |
住宅取得等資金の贈与は2026年(令和8年)12月31日までの契約・取得が対象で、省エネ等住宅なら最大1,000万円が非課税になります。配偶者控除(通称おしどり贈与)は、婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅やその購入資金を贈与するとき、基礎控除110万円とあわせて最大2,110万円まで非課税です。いずれも、税額がゼロでも申告が必要な点に注意しましょう。
贈与税の申告のやり方(期限・必要書類)
贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地を管轄する税務署で行います(所得税の確定申告より開始が遅い点に注意)。スマホやパソコンからのe-Taxにも対応しています。
- 1年間にもらった財産を集計し、110万円を超えるか確認する
- 暦年課税か相続時精算課税かを決める(特例を使うかも検討)
- 贈与税の申告書を作成する(国税庁の確定申告書等作成コーナーが便利)
- 本人確認書類・贈与契約書・登記事項証明書(不動産の場合)などを準備する
- 2月1日〜3月15日に提出し、期限までに納税する
非課税の特例や相続時精算課税は、「税額がゼロでも申告して初めて適用される」ものがほとんどです。申告を忘れると特例が使えず、原則どおり課税されてしまうことがあります。少額の暦年贈与(110万円以下)以外でお金や不動産を受け取ったら、まず申告が必要かを確認しましょう。
よくある間違いTOP5
| よくある間違い | 正しい理解 |
|---|---|
| 110万円は「あげる人ごと」の枠だ | 「もらう人ごと」の枠。複数人からの合計で判定する |
| 名義預金なら税務署にバレない | 子・孫名義でも親が管理する預金は「名義預金」として相続税の対象になり得る |
| 毎年同額の贈与を約束しても問題ない | 定期贈与とみなされ総額に課税されるおそれ。契約書と変化を持たせる |
| 特例を使えば申告は不要 | 住宅資金・配偶者控除などは税額ゼロでも申告が必須 |
| 相続時精算課税はいつでも暦年に戻せる | 一度選ぶと撤回不可。選択前にシミュレーションを |
贈与税は、基礎控除110万円と2つの税率表という基本を押さえれば、けっして難しい税金ではありません。そのうえで2024年改正(生前贈与加算7年・相続時精算課税の110万円基礎控除)や、住宅・結婚といった非課税の特例を上手に使えば、家族へお金を渡すときの負担を大きく減らせます。大きな金額が動くときは、早めに税務署や税理士に相談し、申告漏れのないように進めましょう。