税金

相続税の基礎 完全ガイド 2026|3,000万円+600万円の基礎控除・速算表と「配偶者は1億6,000万円まで非課税」をやさしく解説

親が亡くなったあと、悲しみが少し落ち着いたころにやってくるのが「相続」の手続きです。私自身、祖母が亡くなったときに「うちも相続税を払うの?」と家族で不安になり、慌てて調べたことがあります。結論から言うと、わが家は基礎控除の範囲内で1円も払わずに済んだのですが、それが分かるまでが本当に手探りでした。

じつは、相続税が実際にかかるのは亡くなった方のうち1割前後だといわれます。多くの家庭は基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の範囲に収まるからです。とはいえ「自分の家はどうなのか」を知らないままだと、いざというときに10か月という申告期限に追われます。この記事では、相続税の基本のしくみから2026年の最新ポイント、計算の3ステップ、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例、申告の手順までを、はじめての方にもわかるように整理しました。

この記事の要点

  • 相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。これを超えた分だけが課税対象
  • 相続税の計算は(1)課税遺産総額を出す→(2)法定相続分で按分して総額を出す→(3)取得割合で割り振るの3ステップ
  • 配偶者は1億6,000万円(または法定相続分)まで非課税になる税額軽減がある
  • 自宅の土地は小規模宅地等の特例で330㎡まで評価額が80%減る
  • 申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内。生前贈与加算は2024年改正で3年→7年に延長

相続税とは?かかる人は意外と少ない

相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産を相続や遺贈で受け取ったときに、その財産額に応じてかかる税金です。対象になるのは現金・預貯金だけでなく、土地・建物・株式・投資信託・生命保険金(一定額を超える分)など、お金に換算できるほぼすべての財産です。

ただし、相続した財産がそのまま課税されるわけではありません。あとで詳しく見る基礎控除を差し引き、残った分だけが課税対象になります。この基礎控除がかなり大きいため、相続税が実際にかかるのは亡くなった方の1割前後にとどまります。「相続=必ず相続税」ではない、とまず知っておいてください。

借金や未払いの医療費、葬式費用などはマイナスの財産として遺産総額から差し引けます。一方、亡くなる前7年以内(2024年改正で順次延長中)に受け取った生前贈与は、相続財産に持ち戻して計算します。配偶者が受け取る遺族年金は相続税も所得税もかからない非課税のお金で、相続財産には含めません。

基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人」の計算

相続税を考えるうえで、まず最初に押さえるのが基礎控除です。計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。法定相続人が増えるほど控除額が大きくなり、その分だけ課税のハードルが上がります。

法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円

たとえば父が亡くなり、母と子ども2人が相続する場合、法定相続人は3人なので基礎控除は4,800万円です。正味の遺産額がこの4,800万円以下なら、相続税はかからず、原則として申告も不要になります。まずは「うちの基礎控除はいくらか」を、この式で出してみてください。

法定相続人の数え方には注意が必要です。相続を放棄した人がいても、基礎控除の計算上は「放棄がなかったもの」として人数に数えます。また、養子は実子がいれば1人まで、いなければ2人までしか法定相続人に含められません(基礎控除の計算上)。人数を多く見せて控除を増やす、という対策はできないしくみです。

法定相続人と法定相続分を確認する

相続税の計算では「だれが」「どれだけ」相続するかの目安として、民法が定める法定相続分を使います。実際の遺産分割が法定相続分どおりである必要はありませんが、税額の総額を出すときの基準になります。

相続人の組み合わせ配偶者の取り分ほかの相続人の取り分
配偶者+子2分の1子全員で2分の1(人数で等分)
配偶者+父母3分の2父母で3分の1
配偶者+兄弟姉妹4分の3兄弟姉妹で4分の1
配偶者のみすべて

子が複数いれば、子の取り分(2分の1)をその人数で等分します。子2人なら1人あたり4分の1ずつです。配偶者がいない場合は、子→父母→兄弟姉妹の順で、上位の相続人がいなければ次の順位に移ります。

相続税の計算は3ステップ

相続税は「遺産総額に税率をかける」のではなく、少し独特な3ステップで計算します。ここが多くの人がつまずくところなので、具体例で見てみましょう。

前提:正味の遺産額6,800万円/相続人は母・子2人(計3人)。

ステップ1:課税遺産総額を出す
6,800万円-基礎控除4,800万円=2,000万円

ステップ2:法定相続分で按分し、各人の税額を合算して「総額」を出す
母(2分の1):1,000万円×10%=100万円
子A(4分の1):500万円×10%=50万円
子B(4分の1):500万円×10%=50万円
相続税の総額=100万+50万+50万=200万円

ステップ3:実際に取得した割合で総額を割り振る
法定相続分どおりに分けたなら、母100万円・子A50万円・子B50万円。
このあと、母には配偶者の税額軽減が使えるため、母の負担は0円になります。

ポイントは、ステップ2でいったん法定相続分で分けてから税率をかけ、合算して総額を出すこと。こうすることで、遺産の分け方によって税額の総額が変わらないようになっています。

相続税の税率と速算表

ステップ2で各人の税額を出すときに使うのが、次の速算表です。法定相続分に応じた取得金額に税率をかけ、控除額を引きます。計算式は「取得金額×税率-控除額」です。

法定相続分に応じた取得金額税率控除額
1,000万円以下10%0円
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

たとえば法定相続分に応じた取得金額が5,000万円なら、5,000万円×20%-200万円=800万円です。遺産が大きくなるほど税率が上がる累進構造になっています。なお、配偶者と一親等の血族(子・親)以外の人、たとえば兄弟姉妹や孫が相続すると、税額が2割加算される点にも注意してください。

配偶者は1億6,000万円まで非課税(配偶者の税額軽減)

相続税で最も大きな節税効果を持つのが配偶者の税額軽減です。配偶者が実際に取得した遺産のうち、1億6,000万円配偶者の法定相続分のどちらか多い金額までは、相続税がかかりません。先ほどの計算例で母の負担が0円になったのは、この軽減のおかげです。

配偶者の税額軽減は強力ですが、注意点が2つあります。1つは、税額がゼロでも相続税の申告が必要なこと。申告して初めて適用されます。もう1つは、配偶者にすべて寄せると、その配偶者が亡くなる「二次相続」で子の負担が重くなりやすいこと。一次・二次の両方を見据えて分け方を決めるのが、長い目で見たコツです。

配偶者以外にも、未成年者控除・障害者控除・相次相続控除(10年以内に続けて相続があったとき)など、立場に応じた控除があります。自分が使える控除がないか、申告前に確認しておきましょう。

自宅は330㎡まで80%減「小規模宅地等の特例」

遺産のなかでも評価額が大きくなりがちなのが自宅の土地です。ここで使えるのが小規模宅地等の特例。被相続人が住んでいた自宅の敷地を配偶者や同居の親族などが引き継ぐ場合、330㎡までの評価額が80%減額されます。

たとえば評価額5,000万円の自宅の土地なら、特例で1,000万円として計算でき、4,000万円分が圧縮されます。基礎控除と組み合わせれば、自宅が主な財産という家庭の多くは相続税がかからずに済みます。引き継いだあとに毎年かかる固定資産税の払い方もあわせて確認しておくと安心です。

小規模宅地等の特例にも、配偶者の税額軽減と同じく「税額がゼロでも申告が必要」というルールがあります。また、同居していない子が相続する場合は「持ち家がない(いわゆる家なき子)」などの細かい条件があり、誰が引き継ぐかで使えるかどうかが変わります。自宅が遺産の中心なら、税理士に一度相談する価値が大きい特例です。

生前贈与との関係(2024年改正の7年ルール)

相続税対策としてよく使われるのが、生きているうちに財産を少しずつ渡す「生前贈与」です。ただし2024年の改正で、亡くなる前の生前贈与を相続財産に持ち戻す生前贈与加算の期間が、これまでの3年から7年へ段階的に延長されました。亡くなる直前の駆け込み贈与では、相続税の節税効果が薄くなったということです。

一方、年110万円までの非課税枠を使う暦年贈与や、2024年に年110万円の基礎控除が新設された相続時精算課税など、使い方しだいで相続税を減らせる制度は残っています。生前贈与のしくみと税率は贈与税の基礎の記事でくわしく整理しているので、相続対策をセットで考えたい方はあわせて読んでみてください。

相続税の申告のやり方(10か月の期限・必要書類)

相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署で行います。所得税の確定申告とは期限も提出先も異なるので注意してください。

  1. 相続人を確定する(戸籍を集めて法定相続人を確認)
  2. 財産と債務をすべて洗い出し、評価額を計算する
  3. 基礎控除を超えるか判定する(超えなければ申告不要のことが多い)
  4. 遺産分割協議を行い、だれが何を相続するか決める
  5. 相続税の申告書を作成し、10か月以内に提出・納税する

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合でも、申告そのものは必要です。「払う税金がないから申告しなくていい」と思い込むと、特例が使えず本来不要だった税金がかかることがあります。10か月は集める書類が多く、あっという間です。遺産の全体像がつかめた段階で、早めに動き出すことをおすすめします。所得税の確定申告に慣れていない方は、確定申告のやり方の記事も手続きの感覚をつかむ参考になります。

くわしい計算方法や最新の控除額は、国税庁「No.4152 相続税の計算」でも確認できます。

よくある間違いTOP5

よくある間違い正しい理解
遺産があれば必ず相続税がかかる基礎控除(3,000万円+600万円×人数)以下ならかからない。課税されるのは1割前後
相続放棄すると基礎控除の人数も減る放棄があっても基礎控除の計算では人数に数える
配偶者は何も手続きしなくても非課税税額軽減は申告して初めて適用される。ゼロでも申告は必要
申告期限は確定申告と同じ3月15日相続税は「知った日の翌日から10か月以内」が期限
亡くなる直前の贈与で節税できる生前贈与加算が7年に延長。直前の駆け込み贈与は持ち戻される

相続税は、基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人」と、3ステップの計算、そして配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例という大きな2つの味方を押さえれば、必要以上に怖がる税金ではありません。まずは自分の家の基礎控除と遺産のおおよその額を出して、課税されそうかどうかを確かめてみてください。財産が大きい、自宅以外に不動産がある、相続人の関係が複雑、といったときは、10か月の期限に余裕をもって税務署や税理士に相談しましょう。

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