この記事の要点
- 出産育児一時金は1児につき50万円(2026年)。産科医療補償制度に加入していない施設や妊娠22週未満の出産では48.8万円になります。双子なら2人分(100万円)です。
- 受け取り方は「直接支払制度」が基本。病院が健保に直接請求するので、窓口で50万円を立て替える必要はありません。費用が50万円未満なら差額が後日もらえます。
- 出産手当金は「健康保険の被保険者(働く本人)」だけ。扶養に入っている人や国保加入者は対象外。日額=標準報酬月額の平均÷30×2/3で、産前42日+産後56日が対象です。
- 【2025年4月改正】育休中の手取りが実質10割に。両親がそれぞれ14日以上育休を取ると、育児休業給付67%+出生後休業支援給付13%=80%(社会保険料免除と非課税で手取り実質10割)。
- 出産費用は医療費控除の対象にもなる。一時金で補填された分を差し引いた自己負担が10万円を超えれば確定申告で取り戻せます。
出産は何かとお金がかかりますが、健康保険からはまとまった給付が用意されています。代表的なのが「出産育児一時金」と「出産手当金」、そして雇用保険の「育児休業給付」です。それぞれ対象者・金額・申請先が違うため、知らずに損をする人も少なくありません。この記事では、2026年時点の金額と2025年4月の改正内容をふまえ、もらえるお金の全体像・出産手当金の計算・申請の流れ・注意点を早見表とチェックリストで整理します。
出産でもらえるお金は大きく3つ
まずは全体像をつかみましょう。出産前後にもらえる主なお金は次の3つです。加入している保険(健康保険か国保か、会社員か)によってもらえるものが変わります。
| 給付の種類 | 制度 | 主な対象者 | 金額の目安 |
|---|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 健康保険・国保 | 被保険者と被扶養者(ほぼ全員) | 1児につき50万円 |
| 出産手当金 | 健康保険(本人) | 会社員など働く本人(扶養・国保は対象外) | 給与の約2/3×最大98日 |
| 育児休業給付 | 雇用保険 | 育休を取る会社員(雇用保険加入者) | 賃金の67%→50%(+支援給付) |
専業主婦(夫)や自営業(国保)の人は出産育児一時金はもらえますが、出産手当金・育児休業給付は対象外です。共働きの会社員なら3つすべてが対象になります。
出産育児一時金とは?2026年は1児50万円
出産育児一時金は、健康保険・国民健康保険に加入していればほぼ全員がもらえる給付です。2023年4月に42万円から50万円へ引き上げられ、2026年も50万円が続いています。
- 金額:1児につき50万円。双子なら2人分で100万円。
- 対象:妊娠4か月(85日)以上で出産した人。早産・流産・死産・人工妊娠中絶も対象です。
- 被扶養者も対象:夫の扶養に入っている妻が出産した場合は「家族出産育児一時金」として同額が支給されます。
産科医療補償制度で48.8万円になるケース
「50万円のはずが48.8万円だった」というケースがあります。これは産科医療補償制度の掛金1.2万円が関係しています。
- 50万円:産科医療補償制度に加入している病院・産院で、妊娠22週以降に出産した場合(掛金1.2万円込み)。
- 48.8万円:制度に加入していない施設での出産、または妊娠22週未満の出産。掛金分が差し引かれます。
産科医療補償制度は、分娩に関連して重度の脳性まひになった赤ちゃんへの補償と原因分析を行う仕組みです。ほとんどの分娩施設が加入しているため、通常は50万円と考えて問題ありません。
受け取り方は3つ|直接支払制度が基本
50万円を一度立て替えるのは大変です。そこで多くの人が使うのが「直接支払制度」です。受け取り方は次の3つから選びます。
| 受け取り方 | 立替の有無 | 手続き | こんな人に |
|---|---|---|---|
| 直接支払制度 | 立替不要 | 病院の同意書にサインするだけ | ほとんどの人(最も一般的) |
| 受取代理制度 | 立替不要 | 出産前に健保へ事前申請 | 小規模な助産所など直接支払非対応の施設 |
| 産後申請(自分で受取) | いったん全額立替 | 出産後に健保へ請求 | クレカのポイント等を狙う人 |
直接支払制度では病院が健保に直接50万円を請求するため、窓口では出産費用と50万円の差額だけ支払えば済みます。出産費用が50万円より安かった場合は、差額が後日健保から振り込まれます(申請が必要な健保もあります)。
出産手当金とは?対象は「健康保険の本人」だけ
出産手当金は、出産で会社を休み給与が出ない期間の収入を補う給付です。ここが間違えやすいポイントで、もらえるのは健康保険に加入して働く本人だけです。
- もらえる人:勤務先の健康保険(協会けんぽ・健保組合)に加入している会社員・公務員。
- もらえない人:夫の扶養に入っている人、国民健康保険の加入者(自営業など)。国保には出産手当金の制度がありません。
傷病で働けないときの傷病手当金 申請方法と同じく、健康保険の「働く人向けの所得補償」と覚えておくとわかりやすいです。
出産手当金はいくら?計算式と早見表
1日あたりの金額は次の式で計算します。
1日あたりの額=支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 ×(2/3)
これに対象日数(最大98日)をかけた金額がもらえます。標準報酬月額別のおおよその目安は次のとおりです(単胎・産前42日+産後56日=98日で計算)。
| 標準報酬月額 | 1日あたり | 98日分の合計(目安) |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,444円 | 約43.5万円 |
| 26万円 | 約5,777円 | 約56.6万円 |
| 30万円 | 約6,666円 | 約65.3万円 |
| 40万円 | 約8,888円 | 約87.1万円 |
【2025年4月改正】加入期間が12か月に満たない人の最低標準報酬月額が30万円から32万円に引き上げられました。入社して間もない人は、この最低額で計算されるため以前より少し増えています。
出産手当金の対象期間(産前42日・産後56日)
対象になるのは、次の範囲で会社を休み給与が支払われなかった日です。
- 産前:出産予定日以前42日(双子など多胎妊娠は98日)。
- 産後:出産日の翌日以後56日。
- 合計で最大98日(単胎の場合)。出産が予定日より遅れた分は産前にプラスされます。
休んだ日でも給与が支払われた日は対象外です。給与が手当金より少ない場合は差額が支給されます。
【2025年4月改正】育休中の手取りが実質10割に
出産後の育児休業中は、雇用保険から育児休業給付金が出ます。2025年4月にはここに新しい給付が加わりました。
| 期間・条件 | 給付率 | 備考 |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日 | 賃金の67% | 従来からの育児休業給付金 |
| 181日目以降 | 賃金の50% | 同上 |
| 出生後休業支援給付(2025.4新設) | +13% | 両親がそれぞれ14日以上育休/最大28日 |
両親がともに育休を取り条件を満たすと、育児休業給付67%+出生後休業支援給付13%で賃金の80%。育休中は社会保険料が免除され給付も非課税のため、手取りで見ると実質10割相当になります。さらに、2歳未満の子のために時短勤務する人には育児時短就業給付(賃金の約10%)も新設されました。
退職する場合の出産手当金の注意点
出産を機に退職する場合でも、条件を満たせば出産手当金を退職後も受け取れることがあります。
- 退職日まで継続して1年以上健康保険に加入していること。
- 退職日に出産手当金を受けている、または受けられる状態(産前42日以内で休んでいる)であること。
- 注意:退職日に出勤すると「継続給付」の条件を満たさなくなるため、最終日は休むのが安全です。
退職後の健康保険は任意継続か国保かを選ぶことになります。判断に迷う場合は、扶養の条件もあわせて扶養家族 健康保険 加入条件を確認しておきましょう。
申請の流れと必要書類
出産前後はバタバタするので、もらい忘れがないよう手順を押さえておきましょう。
もらい忘れ防止チェックリスト
- □ 出産前:病院で直接支払制度の同意書にサインする
- □ 産前産後休業に入る前に、勤務先に出産手当金の申請書をもらう
- □ 出産後:出生届・健康保険証(マイナ保険証)の手続きで赤ちゃんを健保に加入
- □ 出産手当金の申請書に医師・助産師の証明をもらう(産後の入院中が便利)
- □ 産後56日経過後に、勤務先経由で出産手当金を申請
- □ 出産費用が50万円未満なら差額の請求を忘れない
- □ 育休を取るなら育児休業給付・出生後休業支援給付を勤務先に申請
主な必要書類は、出産育児一時金は直接支払制度の同意書(産後申請なら申請書+出産費用の領収・明細書)、出産手当金は健康保険出産手当金支給申請書(事業主と医師の証明欄あり)です。
出産費用は医療費控除の対象にもなる
意外と見落とされがちですが、出産費用は医療費控除の対象です。1年間の医療費から、出産育児一時金などで補填された金額を差し引いた自己負担が10万円を超えると、確定申告で税金の一部が戻ります。
- 対象になる:分娩・入院費、妊婦健診、通院の電車・バス代、やむを得ないタクシー代。
- 差し引くもの:出産育児一時金50万円(出産手当金は所得補償なので差し引き不要)。
計算方法や申請の手順は医療費控除の申請方法で詳しく解説しています。
よくある間違いTOP5
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 専業主婦でも出産手当金がもらえる | 出産手当金は働く本人だけ。扶養・国保は対象外(一時金はもらえる) |
| 一時金は必ず50万円 | 非加入施設・22週未満は48.8万円 |
| 出産費用が安くても50万円もらえない | 直接支払制度なら差額が後日もらえる(要申請の健保あり) |
| 退職したら出産手当金はもらえない | 1年以上加入+受給中なら継続給付OK(最終日は休む) |
| 出産費用は医療費控除にならない | 一時金を引いた自己負担が10万円超なら控除対象 |
出産後にもらえるお金もチェック
出産時の給付だけでなく、子どもが生まれたあとに継続してもらえるお金もあります。代表的なのが児童手当で、2024年10月の拡充で所得制限が撤廃され、高校生年代まで対象が広がりました。出生後はできるだけ早く市区町村に申請しましょう(出生日の翌日から15日以内が原則)。
- 児童手当:3歳未満は月1.5万円、3歳〜高校生年代は月1万円(第3子以降は月3万円)。
- 子ども医療費助成:自治体ごとに通院・入院の自己負担を軽減(無料の地域も)。
- 乳幼児の健診・予防接種:多くが公費でカバーされます。
引っ越しを伴う場合の手続きは児童手当 住所変更もあわせて確認してください。
出産でもらえるお金は、出産育児一時金・出産手当金・育児休業給付と種類が多く、対象者や申請先がそれぞれ違います。まずは自分が3つのうちどれに当てはまるかを確認し、もらい忘れがないよう早めに勤務先や健保に相談しておきましょう。出産後の児童手当などとあわせて、受け取れるお金を確実に押さえておきたいですね。