「1年間の医療費がかさんだけれど、医療費控除っていくら戻るの?」「確定申告のやり方が難しそう」そんな疑問を持つ方に向けて、2026年(令和7年分)の確定申告で使える医療費控除の申請方法を、計算式から明細書の書き方、スマホ申告まで一気に整理しました。医療費控除は会社員でも使える数少ない節税制度で、年間の医療費が10万円を超えた人だけでなく、家族の分を合算すれば対象になるケースも少なくありません。さらに過去5年分までさかのぼって申告できるため、「去年やり忘れた」という人も今から取り戻せます。この記事を読めば、自分が対象になるか、いくら還付されるかが具体的な金額で分かります。
- 医療費控除額=支払った医療費 − 保険金等の補填 − 10万円(総所得200万円未満は所得×5%)
- 控除上限は 200万円。還付金は控除額 × 所得税率(5〜45%)で決まる
- 市販薬中心なら セルフメディケーション税制(1.2万円超・上限8.8万円)と選択適用
- 領収書の添付は不要だが 「医療費控除の明細書」の提出は必須・領収書は5年保管
- 2026年の申告期限は 3月16日(月)。還付申告は 5年さかのぼり可能
医療費控除とは|2026年確定申告の基本
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に自分や生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得から差し引ける所得控除です。控除されると課税所得が減り、納めすぎた所得税が還付され、さらに翌年度の住民税も軽くなります。共働き夫婦や離れて暮らす親でも「生計を一にしていれば」合算できるのが大きなポイントで、所得税率の高い人がまとめて申告するほど還付額は大きくなります。
会社員は年末調整で医療費控除を受けられないため、自分で確定申告(還付申告)をする必要があります。2025年分(令和7年分)の確定申告期間は 2026年2月16日(月)〜3月16日(月) ですが、還付目的の申告だけなら1月から提出でき、期限後でも5年以内ならいつでも申請できます。
還付金の計算式|「10万円の壁」と計算3ステップ
医療費控除の金額は次の式で求めます。
= 1年間に支払った医療費の合計 − 保険金などで補填された金額 − 10万円
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は「10万円」ではなく「総所得金額×5%」
「保険金などで補填された金額」とは、生命保険の入院給付金や手術給付金、健康保険の高額療養費・出産育児一時金などです。これらは対象の医療費から差し引きます(補填の対象となった医療費の金額が上限で、引ききれない分を他の医療費から引く必要はありません)。
実際に戻る還付金は、この控除額に 所得税率 を掛けた金額です。さらに翌年度の住民税が控除額の約10%軽減されます。計算は次の3ステップです。
- STEP1:1年分の医療費(家族合算)を集計する
- STEP2:補填金額と10万円を引いて「控除額」を出す
- STEP3:控除額 ×(所得税率+住民税10%)でおおよその減税額を計算
下表は、医療費の合計額と所得税率別の還付・軽減額の早見表です(補填金ゼロ・所得税は復興特別所得税を除いた概算)。
| 年間医療費 | 控除額 | 所得税率5% | 所得税率10% | 所得税率20% |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 10万円 | 所得税5,000+住民税10,000=1.5万円 | 10,000+10,000=2万円 | 20,000+10,000=3万円 |
| 30万円 | 20万円 | 10,000+20,000=3万円 | 20,000+20,000=4万円 | 40,000+20,000=6万円 |
| 50万円 | 40万円 | 20,000+40,000=6万円 | 40,000+40,000=8万円 | 80,000+40,000=12万円 |
所得税率は課税所得で決まり、年収400万〜600万円台の会社員は概ね10〜20%が目安です。同じ医療費でも所得税率が高い人ほど還付が増えるため、共働き世帯は 収入の多い側でまとめて申告するのが定石です。
対象になるもの・ならないもの一覧
医療費控除の対象は「治療を目的とした費用」です。予防・美容・健康増進が目的のものは対象外になります。判断に迷いやすい項目を表で整理しました。
| 区分 | ○ 対象になるもの | × 対象にならないもの |
|---|---|---|
| 診療・治療 | 医師の診療費・治療費、入院費、歯の治療(保険外でも治療目的なら可) | 美容整形、人間ドック・健康診断(異常なしの場合) |
| 医薬品 | 処方薬、市販の風邪薬・胃腸薬・痛み止めなど治療用 | ビタミン剤・栄養ドリンクなど予防・健康増進目的 |
| 通院交通費 | 電車・バス代、緊急時や歩行困難時のタクシー代 | 自家用車のガソリン代・駐車場代、通常のタクシー代 |
| 器具・その他 | 治療に必要な松葉杖・補聴器、医師の指示による医療用器具、出産費用、療養上の世話の費用 | 日常生活用のメガネ・コンタクト、差額ベッド代(自己都合)、医師への謝礼 |
歯科のインプラントやレーシック手術、子どもの歯列矯正(発育上の必要があるもの)は治療目的とみなされ対象になります。一方、見た目を整える目的の矯正や美容目的の施術は対象外です。判断に迷ったら国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の判定ツールで確認しましょう。
セルフメディケーション税制との違いと選び方
市販薬を多く買う人は「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」も選べます。これは健康診断や予防接種など 一定の健康への取組をしている人が、対象のスイッチOTC医薬品を年間12,000円超購入した場合に使える制度です。通常の医療費控除とは どちらか一方しか選べません。
| 比較項目 | 通常の医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
| 対象 | 治療全般の医療費 | 対象のスイッチOTC医薬品など |
| 足切り額 | 10万円(または所得×5%) | 12,000円 |
| 控除上限 | 200万円 | 88,000円 |
| 条件 | なし | 健康診断・予防接種など健康への取組が必要 |
| 向いている人 | 入院・手術など医療費が10万円超 | 通院は少ないが市販薬の購入が多い |
選び方の目安は、医療費が10万円を超えるなら通常の医療費控除、市販薬中心で医療費が10万円に届かないならセルフメディケーション税制です。レシートに「」などセルフメディケーション税制対象の印が付いているので、年間1.2万円を超えそうな人は市販薬のレシートも捨てずに保管しておきましょう。
医療費控除の明細書の書き方
2017年分以降、医療費の領収書の添付・提示は不要になり、代わりに 「医療費控除の明細書」の提出が必須になりました。書き方のコツは「人ごと・病院ごとにまとめる」ことです。日付ごとに1行ずつ書く必要はありません。
記入の3ステップ
- ① 医療費通知の活用:健康保険組合から届く「医療費のお知らせ(医療費通知)」を添付すれば、明細欄の記入を省略できます(自己負担額の合計を転記)。
- ② 明細の記入:通知に載っていない分(市販薬・交通費・自由診療など)を「医療を受けた人」「支払先(病院・薬局名)」ごとに集計して記入します。
- ③ 控除額の計算:支払った医療費の合計から補填金額と10万円を引いて控除額を算出します。
- 領収書は提出不要だが 確定申告期限から5年間は自宅保管(税務署から提示を求められることあり)
- 「医療費の区分」は診療・医薬品・介護・その他から該当するものにチェック
- 交通費は日付・経路・金額をメモしておくと集計が楽(領収書の出ない電車・バスもOK)
申請に必要な書類とステップ(チェックリスト)
医療費控除の確定申告に必要なものをまとめました。提出前に下のチェックリストで確認しましょう。
- 確定申告書(第一表・第二表)
- 医療費控除の明細書
- 医療費通知(あれば。明細記入を省略できる)
- 源泉徴収票の内容(給与所得者。提出は不要だが転記に使用)
- マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
- 還付金を受け取る本人名義の口座番号
- 補填金額が分かる書類(保険給付金・高額療養費の通知など)
提出方法は「e-Tax(電子申告)」「郵送」「税務署へ持参」の3つ。スマホとマイナンバーカードがあれば自宅から24時間提出できるe-Taxが最も手軽で、還付も早い(おおむね2〜3週間)のでおすすめです。
スマホ×マイナポータル連携で自動入力する方法
2026年の申告で最も簡単なのが、スマホとマイナポータル連携を使う方法です。マイナポータルと連携すると、1年分の 医療費通知情報が確定申告書に自動入力され、1件ずつ手入力する手間がなくなります。
スマホ申告の手順
- 事前にマイナポータルアプリで医療費通知の取得を設定(家族分は代理人設定で取得可能)
- マイナポータルの「e-Taxで確定申告をはじめる」をタップし、国税庁の作成コーナーへ移動
- 「マイナポータルと連携する」を選択し、マイナンバーカードを読み取って認証
- 取得済みの医療費情報が自動入力されるので、不足分(交通費・市販薬など)を手動で追加
- 還付口座を入力して送信
- 自動取得できるのは 保険診療分のみ。自由診療・市販薬・交通費は手動入力が必要
- はり・きゅう・整骨院の柔道整復療養費など一部は通知に含まれないことがある
- 家族の分を含めるには、事前にマイナポータルで代理人設定をしておく
還付申告は5年さかのぼれる|よくある間違いTOP5
医療費控除の還付申告は、対象となる年の翌年1月1日から 5年間提出できます。2025年分なら2030年末まで申告可能です。「去年・一昨年やり忘れた」という人も、当時の領収書があればさかのぼって取り戻せます。最後に、申告でつまずきやすいポイントを整理します。
| よくある間違い | 正しい対応 |
|---|---|
| 10万円を超えないと使えないと思い込む | 総所得200万円未満なら所得×5%が基準。パート・年金生活者は10万円未満でも対象になることがある |
| 所得税率の低い側で申告する | 共働きは所得税率の高い人がまとめて申告するほど還付が増える |
| 補填金額を引き忘れる | 入院給付金・高額療養費など補填された分は必ず差し引く |
| 市販薬や交通費を入れ忘れる | 治療目的の市販薬・通院の電車バス代も対象。メモやレシートで集計 |
| 領収書を捨ててしまう | 添付は不要だが5年間の保管義務あり。税務署から提示を求められる場合がある |
高額療養費制度で自己負担を抑えた場合でも、自己負担額そのものは医療費控除の対象です(補填された高額療養費分のみを差し引きます)。入院や手術で医療費が大きかった年は、高額療養費と医療費控除の両方を確認しておくと取りこぼしがありません。